気になる毛髪

日本で1200万人以上の方が悩んでいるといわれている毛髪トラブルのひとつに、男女問わず、ある日突然始まる円形脱毛症があります。｢髪は女の命｣という言葉がありますが、毛髪は性別や年齢に関わらず大切な存在です。今回は、そんな毛髪の悩みについてご紹介いたします。

【毛髪の構造】
毛根は、毛包というサヤのような膜に包まれ、その毛包上部に付属する皮脂腺が、皮脂を分泌しています。毛根の下部は卵形にふくらんでいて(毛球)、毛球の底の窪んだ部分に髪の毛の生産工場にあたる毛乳頭があります。
毛球には、髪の毛を成長させる毛母細胞が詰まっています。毛母細胞は、毛乳頭に通じている毛細血管から栄養を吸収し、分裂を繰り返して上に伸び、毛幹部分、つまり私達が普段『髪の毛』と呼んでいる部分を作っています。毛髪の成長のためには、頭皮周辺の血行が良好であること、毛母細胞の活性が十分に高いこと、などが重要であると考えられます。

【伸びて、抜けて、また生える(ヘアサイクル)】
日本人の毛髪は頭部全体で約10万本あり、毛母細胞の分裂によって、休止期までの一定期間、成長して伸び続けます(成長期)。毛髪の成長期はおよそ2～8年で、毛髪全体の約90％が成長期の段階にあります。
毛根部分での毛母細胞の分裂は、一定期間の後に停止し、退行期(約2週間)を経て休止期(約3ヶ月)に入り、また成長期が始まり、新しい髪の毛が生えてきます。このときに古い毛が抜けていきます。このように、成長期、退行期、休止期と続く一連の流れがヘアサイクルです。人は、一生のうちに15回ぐらいヘアサイクルを繰り返します。
◆ストレスによって誰でもおこる円形脱毛症
円形脱毛症は、ヘアサイクルの成長期にある毛の毛母細胞が一気に死んでしまうことで脱毛が起きます。子供から大人まで、どの年齢層でも見られますが、男女比は女性の方が1.5倍多いといわれ、女性を大変悩ませる毛髪トラブルの一つです。
今のところ円形脱毛症の原因は不明な部分が多いのですが、考えられる原因として、遺伝的素因、精神的ストレス、内分泌異常、自己免疫疾患等があげられます。中でも、精神的ストレスが原因の場合、約3ヶ月前に起こった何らかのストレス・生活環境の変化で円形脱毛症が起きることも知られています。

【今日からできる毛髪ケア】
①スイッチのオン・オフ
過度のストレスは、血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こし、薄毛・抜け毛・円形脱毛症など、毛髪トラブルを引き起こします。ストレスを軽減させるには、好きなスポーツをする、何かに没頭する、などがあります。また、短時間でいいので、意識的に何も考えない時間を作ることもお勧めです。
②十分で良質な睡眠
毛髪は、午後10時～午前2時ごろにかけてもっとも成長するといわれています。睡眠の工夫は、静かで暗い寝室や、適度な室温にすること、就寝前の激しい運動は避けるなどを心がけてください。
③バランスのとれた食事
健康な毛髪にするには、良質のタンパク質(コラーゲンなど)、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンEなど)、ミネラル類(亜鉛、マグネシウムなど)を摂れる食事を心がけてください。また、栄養バランスの手助けにサプリメントが活用できます。
④良質な血行
末梢血管が収縮し毛根周囲の血流が低下すると、毛髪の成長に悪影響を及ぼします。半身浴を行うなどして、血流改善に努めましょう。
〈参考：薄毛・抜け毛を治す　武田克之(著)　講談社〉

＊コラム＊　　腎の華は髪
東洋医学における考え方として、腎は命門(めいもん；生命力、生命エネルギーを指す)を主り、｢精気を貯め、成長・発育・生殖を主る｣働きがあり、人の成長や老化、性機能に深く関与すると考えられています。頭髪は腎精気（じんせいき）の衰退と関係し、腎の健康状態が現れる場所（華）は、髪と言われます。
また古来、髪は血余（けつよ）と呼ばれ、血と精はお互いに養いあう関係にあります。腎精旺盛（じんせいおうせい）ならば、髪は黒く、艶があり、潤っています。髪が細く、乾燥し、密生していないのは腎虚だと考えられます。
（出典：中医学の基礎　東洋学術出）