男性更年期を知る

　更年期は女性特有のものと思っていませんか。そして、更年期と更年期障害を同義語と誤解されていませんか。たとえそうであっても、男性には女性にみられる「閉経」という内分泌学的に大きなイベントがありませんので、仕方のないことかもしれません。
実は男性にも更年期があるのです。個人差はありますが、更年期障害も現れます。そこで今回は、「男性更年期」についてご紹介させていただきます。

◆更年期とライフサイクル
　自然界の生き物は産卵や出産など生殖期を終えると、多くはその一生を終えます。ところが、現代社会は平和と豊かな食生活、衛生環境の改善、医療技術の進歩、新薬の開発などの恩恵を受け、人間だけでなく犬猫などのペットも寿命がすこぶる延びてきました。とりわけ現代人の平均寿命は「人生８０年」といわれるように、古代人の２倍近い長さにまでなり、百歳人口も飛躍的に増加しています。
　そこで、わたしたち現代人にとって、熟年期のQOL（クオリティ・オブ・ライフ；生活の質）をより高く保つために、「更年期」をいかに上手に過ごすかが重要なポイントとなります。ちなみに更年期とは、壮年期後に更に年を重ねていくための階段の踊り場的な期間と捉えるといいでしょう。

◆男の更年期と更年期障害（不定愁訴）
　更年期は、加齢とともに低下する性ホルモンの関係で、それに伴う身体症状や精神・心理関連の症状が現れやすいときといえます。男性における性ホルモンの分泌低下は、女性と違って緩やかですが、加齢に伴い着実に進行し、ついには性機能も低下してしまいます。
　つまり、更年期には個人差こそあれ、各種の不定愁訴に悩み続けることになります。これがいわゆる「男性更年期障害」ですが、一般に認知度が低いため、本人はもちろん周りからの理解も得られにくいのが実情です。自覚した上での更年期障害であれば、理想的な対処も可能なのですが、パートナーや家族など、いつも身近に居られる方が先に心身の異変に気づくケースが多いようです。

◆男の不定愁訴
　男性更年期障害の臨床症状は、下表のように大きく３つに分類されます。性機能関連症状以外は女性にみられる更年期障害の症状とほとんど変わりません。

ここで重要なことは、更年期の男性は、公私ともに最も多くのストレスを受ける状況に置かれていることです。したがって、この時期に遭遇する心理的・社会的背景が、男性の方が女性に比べ、うつ、不安感などの精神・心理症状が強く現れる原因であるとの専門家の指摘もあります。
　ようやく年間の交通事故死者の数が１万人を下回ったというのに、自殺者の数は３万人を突破したままです。厚生労働省の平成１6年度人口動態調査によると、その自殺者の８割は男性で、このうち更年期の男性の自殺率はなんと女性の約３倍です。

◆大切なこと
　男性更年期を上手に乗り切るコツは、自分の心身の変化に早く気づき、その対応策を知ることです。そのための基本的な対処法として、1）食事や運動などの生活習慣を見直す、2）ストレスを減らす、3）適切なサプリメントなどによる健康補助、その上で、4）心のバランスを崩さない生活態度に心がける、ことが最も大切といえます。