「同じ物を食べているのに、どうして自分だけ太るの?」と感じている人も多いのでは….肥満の原因は食事や運動などの生活習慣に加えて、ひとり一人の体質にも関係があります。したがって、同じ物を同じ量食べても、太りやすい人と太りにくい人がいるのは事実です。最近の研究で遺伝子のタイプによって、太りやすい人がいることが分かってきました。肥満に関係する遺伝子はいくつかありますが、ここでは「β-3アドレナリン受容体」の遺伝子についてお話します。この遺伝子は、肥満体質に関係する主要な遺伝子のひとつで、日本人の3人に1人(34%)が太りやすいタイプの遺伝子を持っていることが知られています。
◆脂肪細胞のはたらき◆
食事でとったエネルギーは、身体の維持のための「基礎代謝」、家事や歩行や運動などの「生活活動代謝」、食事をしているときの「食事誘発性体熱産生」で消費されます。食事でとったエネルギーが消費するエネルギーより多い場合、余ったエネルギーは白色脂肪細胞に脂肪として蓄えられます。脂肪の貯蔵は体温の維持や運動などのために必要なものですが、必要以上に脂肪がたまった状態を肥満というわけです。一方、脂肪を燃焼する場合は白色脂肪細胞に蓄えた脂肪が遊離脂肪酸となって取り出され、褐色脂肪細胞で熱産生に使われます。つまり、脂肪細胞には二種類があり、「白色脂肪細胞」は脂肪の貯蔵や取り出しを行い、「褐色脂肪細胞」は脂肪の燃焼を行なっているというわけです。
◆β-3アドレナリン受容体◆
脂肪の貯蔵や燃焼を行なう白色脂肪細胞や褐色脂肪細胞ですが、その働きは、それぞれの細胞の表面にあるβ-3アドレナリン受容体で調節されています。β-3アドレナリン受容体にノルアドレナリンというホルモンが結合することで白色脂肪細胞から遊離脂肪酸が取り出され、褐色脂肪細胞で脂肪燃焼が行なわれるのです。
つまり、「β-3アドレナリン受容体」は脂肪の取り出しや燃焼を行なうように働きかけるので、肥満を防ぐ方向に働くというわけです。
◆太りやすい遺伝子タイプ◆
ところが、β-3アドレナリン受容体の遺伝子は人によってタイプが異なり、肥満を防ぐ働きに違いがあるため、太りやすい人がいることがわかってきました。β-3アドレナリン受容体の遺伝子が太りやすいタイプの人では、基礎代謝が通常よりも200kcal低くなっていて、標準的な量の食事を食べても200kcalのエネルギーが余り、太りやすいのです。
200kcal分のエネルギーが余るとどうなるでしょう。200kcalを脂肪に換算すると、22gの脂肪になるので、一年間(22g×365日)では、8kgの脂肪が蓄積する計算になります。200kcalは食事にすると御飯1杯(140g)のエネルギーで、歩行(早足)の場合40分で消費するエネルギーです。
つまり、太りやすい遺伝子のタイプの人は、通常のタイプの人にくらべて毎日の食事を200kcal分控えるか、200kcal分の運動でエネルギーを消費しないと通常の人にくらべて体重が増えることになります。
日本人では太りやすいタイプのβ-3アドレナリン受容体の遺伝子を持っている人が34%いることもわかっています。民族が生き残る長い歴史の中で、飢餓を乗り越える為に有利となるようにエネルギーを貯めこみやすい遺伝子(倹約遺伝子)を残していったのかもしれません。しかし、現在の先進国にみられるような飽食の環境下では、食事や運動などの生活習慣に気をつけて体重管理を行なうことが大切です。
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