僧侶も走る師走となりました。寒さも本番となりましたが、かぜをひいてはいませんか。
「忙しくて、かぜをひいている暇なんてない!!」という方のためにかぜをひかない・こじらせない工夫をご紹介します。
☆漢方とかぜ
ところで、かぜは漢字で『風邪』と表記されます。この、『風邪(フウジャ)』という言葉は、漢方に由来するそうです。
漢方では、病気の原因を病邪と呼び、外因・内因・不内外因の3つに分けます。そのうち外因は主に気象に由来する病邪のことで、『風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪』の6種類があります。かぜの原因は『風邪・寒邪・湿邪』と中国医学の古典「傷寒論(ショウカンロン)」に書かれており、この外邪が口や鼻、体表から入り、抵抗力が弱いと深部へ侵入すると考えられています。
漢方では、かぜの病邪が体表にあるうちに体温を上げて発汗させ、病邪を外へ追い出す、という治療法があります。
☆主な原因はウイルス
西洋医学では、かぜは『かぜ症候群』といい、気道の急性感染症による症状を総称した病名です。その原因は、ライノウイルスやコロナウイルスなどのウイルスによるものが90%、細菌によるものが10%です。さらに、かぜの原因となるウイルスは200種類以上が知られています。ウイルスは、気道(鼻から気管支までの空気の通路)粘膜の上皮細胞から侵入し、増殖します。また、消化管粘膜の上皮細胞から侵入して、下痢や腹痛などを引き起こします。ウイルスに侵された細胞は、INF-α、β*1を生産し、NK細胞*2を活性化します。活性化されたNK細胞はウイルスに感染した細胞を破壊してウイルス感染を防御するという自然免疫の一端を担い、体を守っています。さて、このNK細胞ですが、体温が上がると活性が上昇するそうです。そして、かぜウイルス、特にインフルエンザ・ウイルスは、高温に弱く、たとえば、体温が37℃になると時間単位、38℃になると分単位、39℃になると秒単位で不活性化します。
☆キーワードは「体温を上げる」
以上のように、漢方や科学が教える、かぜをひかない・こじらせないためのキーワードは「体温を上げる」です。暑いと思うまで上げる必要はありませんが、体は温めたほうが良さそうです。温めるためにハラマキ、レギンス、靴下、ひざ掛け、マフラーはもちろん、活用したいのがスパイス。漢方薬の葛根湯・桂枝湯にも含まれる植物、ショウガとシナモンです。
★ショウガ
ショウガ(Zingiber officinale)はショウガ科の多年草で、熱帯アジアが原産です。辛味成分は主にジンゲロール、デヒドロジンゲロンなど。加熱によって、ショーガオール、ジンゲロンが産生されます。ショウガオールは、トウガラシに含まれる刺激成分カプサイシンと似た構造をもっています。
漢方生薬ではショウガの根茎が使用され、生姜(ショウキョウ)、乾姜(カンキョウ)と呼ばれます。鎮吐・解熱・鎮痛・胃腸運動改善の作用があります。
★シナモン
シナモン(セイロンニッケイCinnamomum zeylanicum BL.)はクスノキ科の常緑高木で、スリランカ、インドが原産です。芳香成分は、主にシンナムアルデヒド、オイゲノール、サフロールです。シンナムアルデヒドがインフルエンザ・ウイルスの増殖を阻害し、マウスの生存率を上昇させたという報告があります(Antiviral Res. 2007 Apr;74(1):1-8.)。
漢方生薬で使用されるのは、この近縁種のシナニッケイ(カシア、ニッキ、Cinnamomum cassia)で、中国やベトナム北部に分布しています。樹皮は桂皮(ケイヒ)、枝は桂枝(ケイシ)、果実は肉桂子(ニクケイシ)と呼ばれ、ケイヒは、発汗解熱・末梢神経拡張・抗菌などの作用があります。
☆温めるには温かい飲み物で
午前中、昼、夕方、温かい飲み物にして摂取することをおすすめします。その際には、香りも楽しんでください。鼻から湿気の多い空気を吸う事で、鼻とのどの粘膜の乾燥を防ぎ、一石二鳥。深呼吸で気分転換、一石三鳥をねらいます。
スタンダードに生姜湯。紅茶にすりおろした生姜、黒砂糖を入れてジンジャーティー。気分転換にいつものコーヒーにシナモンを少々。葛根湯に似せて、インスタントの葛湯(くずゆ)にすりおろした生姜、シナモンをいれて飲むのもいいかもしれません。
温かい飲み物に、シナモンクッキー、そして、あなたの笑顔をつけてくれると、私の場合は心も温まります。
木枯らしの舞う、寒い季節です。『風邪・寒邪』の猛威に負けないよう、心も体も温めて、快適な冬を過ごせますようお祈りしています。
・INF-α、β*1(インターフェロン アルファ、ベータ):ウイルス感染により細胞が分泌するタンパク質。ウイルス性病原体の存在を示すシグナルとなる。
・NK細胞*2(ナチュラルキラー細胞):動物の自然免疫系で働く細胞傷害性のリンパ球の一種。INF-α、βによって活性化され、ウイルスに感染した細胞やがん細胞などを識別して除去する作用を持つ。
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